2012年4月11日水曜日

コラム第6回、野菜の定義について


はじめに

野菜と果物の違いについてちょっとした議論が交わされることがあると思います。中にはそのことで喧嘩をしたり言い争ったり、はたまた賭けをしたりすることがあるかもしれません。そこで「野菜の選び方という趣旨のWEBサイトを立ち上げているのに野菜とは一体どれが野菜で果物はどれが果物なのか?きちんと定義してないのは良くないことだ」とご意見をいただく前に前もって書いておこうと思いました。

ただし、この文書は正当なものでは無いかもしれません。間違った記述がある可能性は十分にあります。(とはいえ根拠の無いことは一切書いていません)なので、指摘を歓迎します。


これは野菜?これは果物?

野菜と一言で言ってもきちんと分けるといくつもの分類が出来上がります。葉の部分や茎の部分を食べる葉茎菜類、根の部分や土の中の茎部分を食べる根菜類、ツルもしくはそれに類似するものに成る果実を食べる果菜類、未成熟のものを皮ごと食べたり中の豆だけを食べる豆類、が最も知られている分類だろうと思います。他にも様々な分類があります。

さて上記の分類の中で野菜かくだものかハッキリしない分類は果菜類です。果菜という名前からして果物かもしれないと思う要因と言えます。まず果菜類に分類されているものを挙げてみますと、トマト・ミニトマト・ピーマン・キュウリ・カボチャ・シシトウ・ナスがありますが、私はスイカ・メロンも果菜類と認識していました。というのも仕事でスイカ・メロンを取り扱う際に野菜と同じように販売されているからです。しかも野菜と同じ場所に置いてありますから知らずのうちに野菜であり、ツルに成るウリの仲間で果菜類なのだと思ったわけです。

ところがごく最近に「果実的野菜」という分類があることを知りました。それを知ってから思ったのですが、たしかに「果実的な甘さを持っているので野菜と決めつけて取り扱うには無理がある野菜」ですよね。で、結局「野菜なのか?果物なのか?」どうなんでしょう...


bamboはどのように速く成長するのでしょうか?

農林水産省ではメロン・スイカを「果実的野菜」として表記していますので、野菜と言えます。だから農林水産省が管轄する中央卸売市場あるいは地方卸売市場では同様に(厳密には野菜と区別はしているものの)野菜として扱っているのでしょう。ただ、八百屋さんやスーパーなどのお店では果物として扱っているところが多いようです。そのことを踏まえると「メロン・スイカは野菜です」と決めるには少々無理があるのかもしれません。

詳しく調べてみると、植物学では、メロン・スイカは野菜とされていました。(簡単なまとめですが、)野菜とは単年草の植物でタネを植えて収穫してその年で終わるものということでしたので、野菜になるようです。

ただし、農林水産省と植物学上で「野菜である」とされているからといって、今後このまま野菜として取り扱われるかというとそうでもないようです。(逆に言えば今のところ野菜ということですが、)これはこの先に変更される可能性は十分にあると思います。


区別あれこれ

野菜か果物か区別する基準は人それぞれに違いがあることがハッキリしました。それらの他人の基準をここでまとめてみたいと思います。 (一般的に言われている基準)

  • 木に成るのは果物、そうでないものは野菜
  • 多年生と1年生(その年で終わるものと複数年に渡って収穫できるもの)
  • 甘さで決める
  • 生で食べるのが果物、火にかけたりドレッシングなどで食べるのを野菜
  • タネを食べられないのが果物、タネごと食べるのが野菜
  • ビタミンの含有量

農林水産省と植物学の見解

  • 一般に、野菜とは食用に供し得る草本性の植物で加工の程度の低いまま副食物として利用されるもの(農水省)
  • 一般的に野菜とは1年生の草本作物(植物学)

例えば、キャベツを例に挙げると、確かに木には成らないし、1年で収穫は終わります。キャベツは果物ではなく野菜ですよね。そしてメロン・スイカも1年で収穫は終わる(また苗から植え始める)し、木には成らないので野菜となります。

で、上記の一般的に言われている基準と農水省の基準と植物学の基準とを比較してみると、木に成るもの(木本の作物)を果物、(葉や茎や根を食用とする)草本の作物を野菜としているところが一致しているようです。


whaty鳥はAETかもしれませんfooodのいくつかの種類があります。

木に成るのは絶対果物か?

では、木に成る野菜は無いのかな?と調べてみたら野菜関連のWEBサイトでは見つかりませんでした。ということは木に成るか成らないかで判断すれば良いと一時は思いましたが、実は植物学や園芸関連のWEBサイトを調べてみると面白いことが見つかったのでした。ある園芸関連のサイトでは、「イチゴはバラ科の木本作物」となっていて、これは果物という風に受け取ることができますし、梅もバラ科の植物ですので、イチゴは木に成る野菜なんじゃないか?と思えます。


イチゴは野菜か?果物か?

農水省ではイチゴを果実的野菜としているようです。八百屋さんでは野菜として扱っているところも少なくないですし、野菜と認識している人も多いと思います。しかし植物学的にはイチゴは果物で、アメリカでも果物として認識されているようです。

どうしてこうした矛盾が起こるのかちょっと調べてみたら、「イチゴは多年性木本植物だが、一般的には一度収穫を終えると、また苗から植え直すのが通例だから」ということで野菜に分類されることになるようです。けれども農学(果樹学)から見た場合は「収穫しながら"永年作物として育てることができる"」ので果物に分類されることになります。

とりあえず、作る側からすれば野菜であり、食べる側と研究者から見れば果物、そして売る人から見るとどっちにもつかない流動的な青果物という結論になります。

野菜と果物の区切り線

野菜と果物を区別するのはとても難しいものがあることが分かりました。では野菜と果物を区切る線上にあるものをピックアップしてみます。

スイカ・メロン・イチゴ・ウメ

これらが野菜なのか?果物なのか?中途半端なものです。ですので私の考えですが、これらを差すときは「青果物」と呼ぶと良いんじゃないかと思います。ちなみにクリ(栗)は果物です。


タケノコやキノコはどうなのか?

ちょっとした疑問なのですが、タケノコは野菜なのか?

タケノコは竹ですから木の分類に当たると思いますし、栽培されているのと自然に生えるものがありますから作物(栽培された植物)ではないと言えますよね。作物では無いとなると「山菜(フキ・ツクシ・ワラビなどの自然に生えている食用植物)」に当たりますから、野菜では無いことになります。ということは青果にもならないということも考えられます。

で、キノコの場合も作物なら野菜(菌茸類)となり、自然のものなら何と呼ぶのでしょう、ね...

こうしたものは山菜的野菜と言うでしょうか。



海外での基準

海外では日本で野菜とされているものを果物として認識されている作物がたくさんあるそうです。イチゴは先程書きましたが、中にはトマト(ミニトマト)を果物として認識している国もあるそうです。

食文化によって認識のされ方が違うのかもしれません。それを踏まえると日本では、メロンやスイカを漬物に加工することがありますから、そのことが理由で野菜と認識されているとも限りませんよね。


植物学の基準

植物学での野菜と果物の分類で分かったことがあったので追記します。2003年10月4日

トマトとナスは1年生の草本植物ではなく、多年生木本植物ということが分かりました。これはイチゴ同様に果物として見ることもできます。逆にパイナップルとバナナは多年生草本植物となっており、これは栽培の仕方によっては野菜と見ることができます。

食べる人の意識・作る人の意識・農水省の定義・農学と植物学。これらを踏まえたらとても分類が困難になってしまうようです。

私は野菜と果物を食べ物として見たら上記の順番で分類するのが妥当だと思いますが…。どうでしょう。


まとめ

野菜とは?
『自然に生えるものではなく人為的に田畑に栽培された農作物の一種で、人々が副食物とする草本作物の茎・葉・根・果実のこと』で、具体的には畑で作られる農作物の一つで、草に実ったりする果実またはその茎や草そのものを私たちが食べていて主食にはしていないモノの名前。と解釈できるんじゃないでしょうか。間違えていたら指摘してください。
果物とは?
『木本性の作物で果実を食べる野菜以外のもの』で、木に実った果実を私たちが食べているもので複数年に渡って収穫できるものと解釈できます。
山菜とは?
『山などに自然に生えていてそれを食用に出来るもの』だと思います。
青果とは?
『野菜と果物を合わせた名称』
スイカ・メロン・イチゴ・ウメは野菜か果物か?
『どちらでも正解。作る側からみれば野菜、食べる側から見れば果物』

参考リソース及び関連サイト

掲示板でいただいた感想など

mickさん 2004/01/08 -yasite BBSの記事NO125


果物とは農学の一分野である果樹学で取り扱う作物を指します。で、果樹学という字面で分かるように、基本は「樹」に生るものが果物ということになります。そこで問題のイチゴですが、コラム中でも書かれていたように、永年生作物であることから果樹学の対象として扱われ、そのためバラ科木本とされています。果樹学とは一度植えた株をいかに維持して、高品質高収量を得るかを研究する学問領域だと考えれば、果物の定義というのが理解いただけると思います。


野菜・果物に関するその他の分類

蔬菜
野菜と同義語(昔の呼び方)
促成青果物
施設などを使い成長を急速に助長して栽培された青果物
清浄野菜
肥料に下肥(牛フンや鶏フンなど)を使用していない野菜
重要野菜
農水省が安定供給するために設けた制度の際に作られた名称
指定野菜
上記に同じ
特定野菜
上記に同じ
洋菜類
レタス・ブロッコリーなどの外来種のこと
緑黄色野菜
  • 農水省ではなく厚生省が設けた分類。
  • カロテンの含有量が100グラム可食中に600ug以上含まれるもの
  • トマト・ピーマンはカロテン含有量が基準値に満たないが緑黄色野菜となる
堅果類
栗(ナッツ類)

終わりに

このコラムを書くにあたって色んな本を読み、またWEBサイトを観覧して回って情報を集めました。その中で感じたのは、野菜を定義するというのはとても難しく余計な混乱を招く可能性もあるということでした。とあるWEBサイトでは野菜と書かれてあるのに違うサイトを見れば果物とされていたりと見解がまちまちで、実際に調べてみると植物学上と農水省の見解にも違いがありました。で、結局イチゴは野菜でも正解だし果物でも正解という結果になり、きちんと野菜と果物を区切ることには無理があるという結論でした。

それでも敢えて区別しようと試みたとして、この先どういう基準で区切られるかは流動的で分かりません。海外に合わせてユニバーサルな基準で区切るのか?それとも消費者サイドに立った基準で区切るのか?もしくは農水省が独自の基準で区切るのか?植物学に応じた基準で区切るのか?

おそらくもうしばらく野菜と果物を区別する基準は固定されないのだと思います。ですから野菜か?果物か?は、それぞれの人がそれぞれの基準で判断して良いと言えます。



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